2022.02.22
リジョブの平均年齢は約30歳。創業13年目と若いソーシャルカンパニーですが、約200名のメンバーの中には、40代や50代で活躍する方ももちろん存在します。今回紹介するのは「真鶴町で最も有名な40代女性」と言っても過言ではない、真鶴サテライトオフィスのリーダー的存在:入江 未央(いりえ みお)さん。なんと彼女は、真鶴の人気地中海レストラン「honohono」の経営者でもあります。
「会社員の頃は、ゲーム・IT業界で常に全力疾走していました」と語る東京時代をはじめ、移住先の真鶴町でも、経営するお店でも、もちろんリジョブでも。どの時代・どの場所にあっても、その熱量・行動力・経験値で「無くてはならない存在」として場を盛り立て、仲間とともに事を前に進ませてきた入江さんに、真鶴のお店で話を聞かせていただきました。
入江 未央(イリエ ミオ):大学卒業後、外資系IT企業・ゲームメーカーに17年間勤務。完全燃焼した会社員生活を経て、2010年に真鶴に移住する。2016年、町内に地中海料理店「honohono」を開業し、代表取締役に。リジョブには2020年の真鶴サテライトオフィス設立当初より携わり、真鶴メンバーのリーダーとして、地域へ新しい雇用スタイルを実現し・社内には事業数値で貢献している。座右の銘:「焦らない、無理しない。」
新卒でセガに入社。お台場のアミューズメント施設で有名な「ジョイポリス」で現場勤務後、ゲーム開発部門の役員秘書をしていました。ここと、次に勤める外資系インターネットプロバイダ勤務の計6年間で社会人としての基礎を培ったと思います。その後は再びゲーム業界へ。「ゲームコンテンツを、いかにして世の中に出していくか?」を担うポジションで、取引先との渉外活動、セールスプロモーションから事業推進まで、がむしゃらに働く日々でした。平日昼間は仕事に全力疾走、そのまま夜は取引先と飲み会へ。週5回の飲み会が続いたことも。そんな時代でしたし、仕事が楽しくて仕方ありませんでした。
※役員秘書時代。社会人としてのマナーをたくさん学びました!
ただ、当時はドコモやKDDIなど大手携帯会社との連携業務も多く、そのスケール感の大きさがやり甲斐だったと同時に、BtoBの仕事がメインの為、直接消費者と触れる機会が少ないのが若干の引っかかりでもありました。印象的だったのは「東京ゲームショウ」。お客さんが自社のゲームで遊んでいる姿をリアルにみられる唯一の場所で、自分の仕事が消費者につながり、喜ばれていることが、ストレートにとても嬉しかったんです。この「顔を見える」関係ならではの新鮮さや喜びは、今の私の生き方の原点にもつながっていますね。
※東京ゲームショウでの1枚(右)はじめ、現場感満載の写真です。
その後は、携帯用ゲームをゼロから創るベンチャー企業に創業メンバーとしてjoin。事業計画づくりから資金調達、提携先とのパートナーシップ策定や渉外交渉など、ここでも猛烈に働いていました。一方で、一足先に移り住んでいた両親に続いて、2010年には自分も真鶴町(神奈川県)へ移住。当初は都心まで新幹線通勤をしていましたが、3年が経過した頃、真鶴に夫がレストランを出す話も本格化し「もう充分やり切った。そろそろゲーム業界を卒業しよう」と思い立ったんです。
※会社員時代に得た仲間たち。全員取引先や同業界他社のつながりです…! 私の結婚パーティを企画実施してくれるほどの仲でした(^^♪
元々、夫とともに真鶴の土地柄に惚れ込んで。真鶴港目の前の立地に、地元食材を使った地中海レストランを立ち上げました。店名の「honohono(ホノホノ)」は、ハワイの言葉で「入江」や「散歩」といった意味を持ちます。真鶴港の入江、そして自分たちの名前を掛け合わせました。
お店は「癒し」「自然」そして「健やか」をテーマに、毎日通うには少し値段が張るかもしれないけれど、家族で嬉しい出来事があったり、大切な友達との食事だったり、そういった時に通いたいお気に入りのお店。真鶴の地元にも、遠くから訪れるお客様にも、愛されるお店を目指しています。
真鶴半島に育まれた魚や地場野菜はもちろん、前菜に「そうくるか!」とサプライズの一品を潜ませたり、店頭で地元作家さんの雑貨小物を販売したり。他には無い、honohonoならではの料理やおもてなし、空間づくりを心掛けています。
資金調達や財務面のサポートなど私が担い、料理や接客など、現場のことは主人が全面的に担当しています。立ち上げからしばらくは店で一緒に働いていたこともありましたが、少し距離感が近すぎて。今は私が夕方までリジョブの仕事をしているので、この距離感がお互い丁度いいです。それにしても、工学部出身の夫と、ゲーム業界出身の私が真鶴でレストランを開くなんて、学生時代には考えられませんでした。人生って面白いですよね(笑)。
※真鶴港の目の前に佇む「honohono」の様子です♪
※お店を支えてくれているシェフやスタッフのみなさん!中央は夫です。
真鶴町は、神奈川県初の過疎地域に指定され、人口は約7,000人。小田原と熱海に挟まれた小さな町ですが、観光開発バブルに一石を投じ景観の大切さを言葉にした『美の基準』(書籍として真鶴町で販売中)の影響をしっかり感じさせる空気感が、常に全力疾走していた心も身体もリセットしてくれました。人と人との距離感の近い、密度の濃い町です。今はリジョブの仕事を~15:30まで行った後、子どものお迎えや家事の合間に一日に一度はボーっとしていられる時間を意図的に作っていますが、これがとても心地良くて。
もちろん、人口減少や雇用不足、高齢化など、地方の町ならではの課題をもれなく抱えておりますが(笑)、一人ひとりの声が町を変える力になり、それを体感できるのも、この町ならではの面白さ、醍醐味だと思っています。
冒頭で「顔を見える」関係の大切さについて語りましたが、誰かと誰かが顔見知りなのが当たり前なこの町って、ものすごく貴重だと思うんです。都心にいると、刺激が多い反面、人も情報も膨大で「あなた」や「わたし」が曖昧になってしまうことも。だからこそ、真鶴の人との距離感に感謝していますし、お店でも、電話一本でも、相手の名前とともにありがとうございました、を心をこめて伝えようと、常に心掛けています。
※地元のお餅つきなどなど。右上は「貴船まつり」の本神輿を担ぐ父と。お店の安全と繁盛を祈願しました!
元々、真鶴町役場でサテライトオフィス誘致事業を担う卜部さんと夫が友人関係にあったので、以前から卜部さんの町づくりへの情熱をひしひしと感じる機会がありました。そしてレストランも軌道に乗ってきたある日、卜部さんから聞いたのが「真鶴町に、都心からサテライトオフィスを誘致したい」というお話だったんです。この時、すごくピンときました。
というのも私自身、真鶴の魅力に惹き付けられて移住をした当事者ですが、町に若い世代が移住・定住するためには、「雇用づくり」そして「魅力ある子どもの教育環境」が欠かせないと感じています。真鶴は良い町だけれど、リジョブがサテライトオフィスを出すまで、町の女性たちは、小田原や熱海など、他の町へ働きに行くケースが多く、町の中に雇用が足りているとは言えません。特に「オフィスワーク」は皆無に近かったんです。
今は、空き家をリノベーションした月光堂シェアオフィスを拠点に、求人サイトリジョブのお客様に対する、採用手続きのフォロー業務や管理業務を担っています。リジョブがサテライトオフィスを開設したことで、これまでに無かった仕事が真鶴に生まれ、そこで働く女性たちのとても嬉しそうな姿を見て、「こういった輪をこれからも大きく育んでいきたい」と感じています。
※サテライトオフィスのイメージです。以前は写真館だったそうです…!
これは、卜部さんも常々お話しされていますが、この町では特に、まず「顔見知り」になることの重要性を実感しています。サテライトオフィスで働くメンバーも、保育園のママ友だったり、町が企画した子育て世代対象の就業ワークショップの参加者だったりと。すぐその時でなくても、「この町でどういう人が、どういった想いで生きているのか?」を知ることで、何かがつながる機会があるだろうと思い、今も町の仕事に関するイベント(参考例:http://www.town.manazuru.kanagawa.jp/material/files/group/28/tirasi.pdf)には定期的に顔を出しています。
何か事を成すときに、仕組みや資金も必要だけれど、同じくらい人材も必要で。真鶴はわずか7,000人の町なので、理念と仕組みがしっかりしていれば人は自然と集まってくるし、事業やプロジェクトを持続可能なものにできると思うんです。
そして地域雇用においては、「ボランティア」という綺麗な名前の無償労働だったり、不当に安い対価になることが多い「ネットを介した業務委託という搾取」では、健全な関係性が築けず長く続かないと思ってます。当たり前のことですが、労働には正当な対価が必要です。そうでなければ結果的に「持続性」とは遠くなってしまう。そこでサテライトオフィス誘致の話を聞いた時に、リジョブの「真鶴メンバーがリジョブの事業へ貢献し、適正な仕事の対価を得られる仕組みを創る」という話に共感しました。
その上で、働くからにはきちんと成果を上げ続けたいと思い、約半年をかけて真鶴チーム発案で仕組みの構築にあたりました。その結果、サテライトオフィス開設後は、開設前と比較して業務精度が大幅向上したり、該当部門売上が26%伸長する成果を上げられました。
※余談ですが、テレビ神奈川『あっぱれKANAGAWA!』でオフィスが紹介されました!
そうですね、先程移住・定住の条件に「雇用」と「質の良い子どもの教育」があると話しましたが、雇用については今回のサテライトオフィス開設で、ひとつ風穴を開けられたと思うんです。一方で「子どもの教育」については、私自身も一児の母として、まだまだ、やれることが沢山あるなと痛感しています。
例えば、真鶴の子ども達は小中学校ともに1校・最近は1学年1クラスということも多いですが、そこには良い面もある一方で、コミュニティが狭く、想い描く進路が限られてしまうといった怖れ・弊害もあります。また、自然に恵まれているようでいて、実際は外遊びをする時間が統計的に少なく、家でゲームをしている子どもも多いといった、外からの印象とは違う一面もあります。
子ども達が日常の中で触れる、漁業や農業、石材業といった地場産業のほかにも、世の中には様々な仕事があり、多様な価値観で生きている大人がいるということ、大げさに言えば「広い世界を、真鶴からも見られること」を体感できるような機会を、真鶴の子ども達のために創っていきたいと考えています。
今はまだ、詳細をお伝え出来ませんが、真鶴町の美術館や博物館と連携しての体験プログラムを創ったり、都心から子ども達憧れの職種で働く人を呼んできて、小中学校で出張講演をしてもらったりなど、夢は膨らみますね。
※娘の保育園での一枚です。この子たちの将来にたくさんの選択肢が生まれますように…!!
きっと、さまざまな人と接してきて、それぞれの方の想い、悩み事、そういった事を聞いているうちに、「しゃあない、私がやるしかないな~!」と思ってしまう元々の性格、根っからの世話焼き気質だからですね。
会社員時代は「チームで成果を出すために、私がなんとかしなきゃ!」と渉外活動に駆け回り、レストラン立ち上げ期は「夫にはお店づくりに徹してもらう方が、店全体が上手く回る!」と資金調達やバックサポートを担い、サテライトオフィス開設時は「オフィスで働くみんなが幸せになれるのなら!」とまとめ役を買って出る…と、振り返ると「全体を考えたうえで、自分だから出来る最適最善の役割を担う」ことが、当たり前になっていたように思います。
というよりもむしろ、自分のためだけだったら、こんなに走り続けられなかったと思います。誰かが喜んでくれる姿が嬉しいから、チャレンジできるのでしょうね。
真鶴町のサテライトオフィス誘致担当:卜部さんともども、真鶴にとっても、リジョブにとっても無くてはならない存在の入江さん。2人に共通するのは「惚れ込んだ真鶴町を、人が移住・定住できる町にしていく為に、雇用と教育課題を解決していく」という志と熱量、そして目の前のひとりを大切にする姿勢と行動量だなと感じました。
そんな入江さんが大事にしている言葉は【 焦らない、無理しない。】。「やりたいことも、やらなくてはいけないことも、つい急ぎたくなるときもあるけれど実行するのに最適なタイミングというのが必ずあるはずだから、焦らない。そして、無理しないこと。自分が辛いのに無理して進めても、楽しくありませんよね。20代、30代とずっと詰め込んで全力疾走だった私が、真鶴に移り住んで学んだことなんだと思います。」と話してくれました。
「人生120年時代」とも言われる昨今。90代の現役美容師、80代のプロピアニスト等々、年を経てなお、さまざまなフィールドで活躍される方を目にしていると、その生きざまに「20代、30代、40代なんて、まだまだこれから!」と、発奮させられます。
リジョブには年代を問わず、入江さんのように「誰かのため」に力を発揮するメンバーが沢山います。入江さんの真鶴での挑戦第3章、楽しみにお待ちください!
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